IE11のブラウザ対応についてフロントエンドエンジニアがまとめてみました(後編)

UX/UIチームでフロントエンドエンジニアを担当している北村と申します。

さて、「IE11のブラウザ対応についてフロントエンドエンジニアがまとめてみました(前編)」では、数あるwebブラウザの中でInternet Explorer(以下IE)がどういった状況にあるのかということについてご説明しました。

前編の冒頭でもあった通り、弊社ルート・シーでは、2021年4月1日より標準ブラウザからIE11を外すことになりました。
この後編では、「ルート・シーの方針と対策」についてご説明します。

IEのブラウザ対応についてルート・シーの方針と対策

これまでIEの現状を説明させていただきましたが、IEの厳しい現状が伝わったかと思います。
ルート・シーでは昨年からこのようなIE11の現状を社内で共有し、今後も標準ブラウザに含めるかどうかについて、各立場のメンバーからヒアリングを行い、検討してきました。そしてIEの現状を認識するにつれ、ルート・シーとして必要な方針が明確になってきました。

それが下記3点です。

  • ユーザーを安全な方向へ誘導すること
  • 企業の社会的責任を果たすこと
  • 新しい技術に対応すること

それぞれ順に説明いたします。

ルート・シーの3つの方針

方針1:ユーザーを安全な方向へ誘導すること

一つ目の方針は、サイトを訪問するユーザーのセキュリティリスクを減らすためです。

セキュリティリスクはどのブラウザを使っても避けられませんが、IEにはブラウザのサポート終了とActiveXという、IE特有の大きな問題が存在します。

サポートについては、すでにWindows 7のIE11はサポートを終了してセキュリティパッチが配布されていませんし、2023年にはWindows 8.1のIE11のサポートが終了します。ActiveXについては、IEを介すことでWindowsの重要な機能にアクセスされ、攻撃を受ける可能性があります。IEに対応するサイトを作ることでIEユーザーが減らず、彼らがこのようなIE特有のセキュリティリスクを抱えることになってしまいます。

そのため、そのようなユーザーを減らす必要があると考えました。

方針2:企業の社会的責任を果たすこと

二つ目の方針は、安全なブラウザを使用するユーザーの増加に貢献することを、ルート・シーの企業としての社会的責任とするためです。

今までIEユーザーがそのブラウザを使い続けてきた要因のひとつとして、我々制作会社がIEをサポートしたサイトを提供してきたことが挙げられます。もちろんこれまでのIEはマイクロソフトによってサポートされ、脆弱性があればセキュリティパッチが配布されてきましたし、シェアも大きかったです。そのため、IEユーザーをサイトのターゲットとしてサポートすることは、制作会社や制作会社に依頼する企業さまにとって自然なことだったと思います。

しかし現在は状況が変わり、IEのシェアは小さく、IEに対するセキュリティパッチのサポートも順次終了していっています。そして、既にサポートが終了したWindows 7などのIEユーザーはセキュリティリスクを抱えています。その状況を招いたことはユーザー本人にも原因があるかもしれませんが、普段の生活や仕事においてブラウザの違いやセキュリティを意識する機会がない場合、IE特有のセキュリティリスクを認識することは難しいと思います。また、彼らユーザーは我々制作会社のクライアントさまにとって大切なユーザーであります。そのユーザーが安全なブラウザを使用すること、そしてユーザー数が増えることに我々が貢献することは、現在の制作会社における社会的責任であると考えるようになりました。

以上のことから、我々ルート・シーにご依頼をいただくお客さまに対しても、IEおよびそのユーザーの現状について、ともに考え、社会的責任と「ユーザー目線」というブランディングに寄与するという観点で、IEをサポートしないサイト制作にご理解を賜われるよう、努めていきたいと考えています。

方針3:新しい技術に対応すること

三つ目の方針は、IEをサポートしているときには採用しづらかった新しい技術へ対応するためです。

既に述べましたように、IEとその他主要ブラウザとの機能差は大きいです。最新のIE11でさえ2015年に開発が終了しているため、その他主要ブラウザが備えている新機能を備えていない場合が多いのです。そのため、制作会社として下記のいずれかの対応を行っていました。

  1. IEの機能に合わせるため、新しい機能を使わない
  2. IEとその他主要ブラウザで別の機能を使う
  3. IEとその他主要ブラウザとの機能差を埋めるツールを使う

しかし、それらは完全な方法ではありませんでした。

1は新しい機能を使わないので、古い機能や非効率な作り方になります。
2は別々の機能を使うためのプログラムなどを作成するため、工数が増えます。
3は我々が求める機能に、使用するツールがIEに対応していれば工数は少なくて済みますが、求める機能に完全に合うツールがあることは少なく、ある程度IE向けの対応が別途必要になる場合があります。

このように、IEをサポートすると新しい機能を採用しづらく、しかも工数が増えてお客さまが支払う費用を増加させることになります。これは制作会社にとってもお客さまにとってもよくありません。

IEをサポートしないことで新しい機能を使用し、便利で魅力的、かつセキュアなサイトをお客さまに提供したいと思っています。

3つの方針にもとづいたIE除外の決定

そして、IEの現状分析により明確となった、これら3つの方針にもとづいて検討した結果、IEを外すことを決定いたしました。IEの現状を踏まえて検討しました結果ですので、我々のお客さまや依頼を検討されておられる方にはご理解いただければと思います。

ルート・シーの対応

ルート・シーの標準ブラウザからIEを除外することになりました。とは言えIEユーザーは存在します。彼らに別ブラウザを使用していただくためには何かしらの対応が必要です。

そのため、ルート・シーではそれらIEユーザーのために、おもに下記の方法で別ブラウザへの誘導を提案させていただいております。

  • IEからEdgeへのリダイレクト
  • 別のブラウザの使用を勧めるメッセージの表示

別ブラウザへの誘導方法

IE11からEdgeへの自動リダイレクト

この方法は、IE11でサイトを表示しようとするとブラウザが自動的にIEからEdgeへリダイレクトされ、Edgeでサイトが表示されるというものです(※1)。

下のキャプチャはその方法を実際に適用したものです。このように、IE11で弊社サイトへアクセスしようとするとEdgeへリダイレクトされます。

ただ、この方法を行うためには、そのサイトがリダイレクトの対象であることをマイクロソフトへ申請する必要がありますが、その申請が必ず承認されるかどうかが明確にされていないため、承認されない可能性があります。その場合は別の方法(※2)でリダイレクトさせます。また、リダイレクト先ブラウザはEdgeのみとなり、ChromeやFirefoxへのリダイレクトはできませんのでご了承ください。

※1 下記ページで説明されている方法を使用します。
Internet Explorer から Microsoft Edge にユーザーを移動する
Edgeへリダイレクトされるためには、そのサイトがリダイレクトの対象となるようマイクロソフトへ申請する必要があります。ただ、申請が承認されるかどうかは明記されていません。もし承認されない場合は、JavaScriptを使用してIE11からEdgeへリダイレクトされるようにいたします。(※2)

※2 JavaScriptというブラウザで動作するプログラミング言語を使用し、IE11でページを表示したタイミングや、リンクをクリックしたタイミングでEdgeへリダイレクトさせようと考えています。タイミングやその他詳細はお客さまとご相談の上、決定させていただきます。

別のブラウザの使用を勧めるメッセージの表示

この方法は、IEでページを表示すると他のブラウザの使用を勧めるメッセージを表示させるというものです。
メッセージ文は「お使いのブラウザは現在はサポートされていません。快適にご利用いただくには推奨環境をご覧ください。」のようなものです。
なお、このメッセージは他のブラウザでは表示されないようにいたします。

IEへの対応が必要なお客さま

その他、どうしてもIE11への対応が必要なご事情がある場合、IE11をサポートしたサイトを制作させていただきます。社内のイントラネット(※3)内のサイトであればIE11でも問題ないと思いますのでIE11対応させていただきます。

また、イントラネット内のサイトではない一般公開するサイトに対してIE11をサポートすることはお勧めできませんが、どうしてもサポートが必要になる場合もあるかもしれません。その場合は、Edgeへのリダイレクト、もしくは別ブラウザの使用を提案するメッセージも表示するなどの方法を採用するのが良いかと思いますが、一度ご相談いただければと思います。

※3 イントラネットとは、TCP/IPなどの技術を用いて構築されたプライベートネットワークのことです。そして、外部のネットワーク(※インターネットなど)へアクセスすることは基本的にできず、外部からの攻撃を受けにくい特徴があります。
下記ページが詳しいです。
イントラネット 【intranet】

最後に

まずは、とても長い記事になってしまって恐縮です。
本当はもっと短くさくっと読んでいただけるものにするつもりだったのですが、いろいろ書きたくなってしまい、こんなに長くなってしまいました。

その理由を考えると、文章スキルの問題もあると思うのですが、、IEという存在も影響しているように思います。というのも、私は長年web制作の仕事をしてきましたが、その間ずっとIEはその高いシェアのためターゲットブラウザから外すことがあってはならないアンタッチャブルな存在で、今回の決定はそのIEに引退していただくという一大事であり、そのためには読んでいただく方に納得していただける根拠と論拠を示す必要があると思い、細かく書くことになりました。

現在はシェアも低く、昔からのしがらみで新しいチャレンジができずイケてないイメージのあるIEではありますが、2002年にweb業界に入った私にとってのIEは90%以上のシェアを誇る巨人でした。その後2015年前後(※4)にChromeに抜かれるものの、最近まで高いシェアを誇ってきたwebの主人公の一人です。

しかも、IE5の昔からAjax(※当時はActiveXを使用する必要がありましたが)の機能を有し、IE6でも文書構造を意識したマークアップや、XHTMLへの対応、CSSによる段組レイアウトなどが可能な、そこそこ先進的なブラウザでした。もちろんFirefoxやOperaなどのほうが後発のためweb標準の多くの仕様に対応していましたが、IEも頑張っていたかなというのが私の印象です。そのあたりの事情は当時web制作されていた方は実感されているのではないでしょうか?そんなIEが高いシェアを持っていたからこそ、その後のweb標準に準拠したサイトや、CSSレイアウトのサイト、Ajaxを使用したwebアプリケーションの普及が可能だったのだと思います。やはり多くのユーザーがいないとそのようなサイトを制作しようと思わないでしょうから。。

その後、Firefoxはもちろん、Chromeなどの新しいブラウザがweb標準の新しい仕様であるHTML5、CSS3、ES6などに対応するのに対し、IEはこれら仕様への対応が不十分で、その他主要ブラウザとの表示や動作の差異が顕著になり制作者を苦労させたのは事実で、Chromeの人気とIE非対応のサイトの増加が相まってIEのシェアが低くなり、Chromeに大きくシェアを抜かれてしまいました。

とはいえ、長い間に渡ってweb業界の発展に大きな役割を果たしたことに対して、IEはもう少し評価されてもいいのでは?と執筆しつつ思いました。

※4 時期については、統計元やデバイスにより異なりますが、大体この時期前後になるかと思います。ちなみに私が参考にしたのはStatCounterによる統計です。

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